雑踏のエネルギー
都内に頻繁に出るようになったのは、大学生になってから。
それまでは東京に住んでいながら、あまり23区内に一人で出ることはまずなかった。
緑の多い東京の端っこで、すべては完結していた。
大学に行くためには必ず新宿を通らないといけない。
交通費を安く済ませるために、新宿の雑踏を歩かなければならない。
ゴミゴミしてるし、みんな急いでいるし、緑もないし、空気も悪いし、恐い人もいるし、人は冷たいしで、とにかく嫌だった。
ところが新宿を歩いていると面白い発見がたくさんあることに気がついた。
それは「人」。
新宿で生きている人たちは、体中から人生がにじみ出ているというか、とにかく一種独特な人たちだ。
特に見るのが好きだったのは、托鉢をしているお坊さん(本当にお坊さんかどうかは不明)、犬を2頭連れていた南米系の行商人団体(今いなくなってしまった)、それに占い師のみなさん(おなじみの占い師さんは3人いた)。
彼らは新宿の西口に、ほとんど毎日いた。
なぜ、誰も立ち止まろうとしないような場所に、毎日いるんだろう?
なぜ、新宿なんだろう?
いつから、ここにいるんだろう?
考えれば考えるほど、その後ろには深い人生があるんだろうな、と思われて仕方ない。
ギラギラと怪しげで、いやに明るいネオン。
数えきれない客引き。
酔っ払ってそのまま明けたような、気だるい朝の空気。
ちらかったゴミに集まるカラスの群れ。
ブランドバッグをぶら下げた人もいれば、ホームレスもいる。
雑多だ。
雑多すぎるのに、いつの間にか惹かれるようになった。
もちろん自然も大好きだけれど、私は新宿も好きだ。
静かな場所で、静かに暮らすことはとても良い。
世の中、知らなくてもいいことはたくさんある。
けれどもこの雑多なエネルギーが、表面的には単なる喧噪に見えても、その実奥深いものなのだと感じることができたら、もっと見える事が増えるんじゃないかと思う。
たまには喧噪にまみれてみるのもいいかな。