イヌマキの行方
平地でも紅葉がすすみ、落ち葉が目立つ季節になりました。
さて、伊豆大島では冬になると葉を落とす「落葉樹」は少ないです。
冬に島を訪れても、緑色が目立ちます。
夏ともなれば、それこそ島全体がモッサリしていて、まるでジャングルに来たかのような雰囲気です。
島の木は、本土とは異なり、特に定期的に噴火があることから、種類は限られます。
そのなかでも、島の南部の差木地という地域の「春日神社」では、その一帯に生息する「イヌマキ」という樹木(常緑)が、「春日神社イヌマキ群叢」として都の天然記念物に指定されています。
そんな夏のある日、春日神社を目指して車で走っていたのですが、このあたりは大島でも古い地域なので、複雑かつ狭い道が続きます。
案の定、迷子になりました。
車を止めて、地図とにらめっこをしていたら、運よくこんな車がきました。
先導者の人に道を聞いて、ついでにこれはなんですか?と聞いてみました。
この一帯に多く生息する「イヌマキ」を島外で売るということで、今せっせと港に運んでいる、とのことでした。
本土ではこれだけ大きい「イヌマキ」はなかなかないとのこと。
庭樹として人気が高いようです。
そうして運ばれていく「イヌマキ」の後ろにくっついて、ようやく辿り着いた「春日神社」。
立派な「イヌマキ」が迎えてくれました。
ほとんど人のいない、静かな境内。
噴火の多い島で、これだけの立派な「イヌマキ」が育つのに、どれだけの歳月がかかったでしょう。
神社の「イヌマキ」は天然記念物なので、残っていくかもしれませんが、周囲の「イヌマキ」は減っていくことになります。
社殿の脇には、倒れながらもまだ青々としている葉をつけた巨木の「イヌマキ」がありました。
自然と人間がどうやったら共生できるか、考えさせられる一日でした。